亡くなった母の料理のこと

私の母は七年前に亡くなりました。まだ五十代での突然の別れでした。当時は独身だった私も結婚して二児の父親になり、時には妻に代わり家族のために料理を作るようになりました。そして、結婚当初は料理が苦手だった妻も現在ではすっかり我が家の味=母の味を再現してくれるようになりました。そんな今、私は時々母の料理を思い出すことがあります。
 私の母はもともと料理が得意な方ではなかったように思います。どちらかというと家事よりも事務的な仕事をする方が得意であったようです。母方の祖母も料理が得意ではなかったようなので、母も結婚当初はあまり料理ができなかったのではないかと思います。また、私の母の世代は食文化が急激に豊かに変化していくなかで生活し子育てをしなければならず、そうした意味でも私達子どものために作る料理には苦心したのではないかと思います。
 そうしたなかで母は私たちのために色々な料理を作ってくれたように思います。普段の食事だけではなく誕生日の手作りケーキやピザなど、子ども達を喜ばせようと様々に努力してくれていました。
 母の料理に対する姿勢は母らしく大変几帳面なものでした。作る工程というよりも、新しいレシピを入手する仕方にそれがよく表れていました。母は料理本だけではなく、料理番組からレシピを入手していました。テレビで実際に調理している様子を見たうえで、最終的に画面に表示される材料一覧を覚えて詳細なメモを取っていたのです。しかも、ビデオに録画することもなく、その作業を行っていました。今でもその一部が残っていますが、そのマメさには驚かされます。
 子どもの頃の私は母が料理している傍らにいってその様子をよく見ていました。お手伝いをすることはあまりありませんでしたが。しかし、私が大学生になり一人暮らしをするようになってから、自分でも意外なほど料理ができたのはきっと母が料理をする姿を見ていたからだと思います。
 私達夫婦も子ども達に同じことが出来ればいいなと思います。

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