妻の料理のこと
結婚して五年が経ち、現在は同居している私の父親も満足する料理を作れるようになった妻ですが、結婚当初はほとんど料理を作ることができませんでした。実家にいるときにはまったくといっていいほど料理をすることがなかったようで、ご飯を炊いたことさえほとんどないようでした。
まだ付き合っていた頃の話、妻はきっと料理が上手な人だろうと私は想像していました。妻は花屋に勤めていたこともあって手先の器用さを感じることが時々あったからです。しかし、妻の手作りお弁当を持って二人で外出したときにその印象が間違いだったことに気が付きました。別に失望した訳ではありません。お弁当に、いかにも“あまり作ったことはないけれど、一生懸命頑張りました”という感じがあらわれていて、微笑ましいほどでした。可愛らしいお弁当を作る余裕もなく、それでも朝早く起きて作ってくれたようで寝不足の様子でした。
結婚するときに妻は新居に料理本を何冊も持ってやってきました。しかし、どんなにたくさんのレシピが掲載されていようと、いざ作ろうとして作れる料理はそれほど多くないものです。好みの問題があるからです。たちまち、毎日のメニューに困るようになってしまいました。本人もそのことを気にしていましたが、私もついつい本音を漏らしてしまうことがあり喧嘩をしてしまったこともありました。
そこで、もともと好きだったこともあって、ときどき私が妻の代わりに料理をするようになりました。私も妻と同様にあまり多くのレシピを知っている訳ではないので試行錯誤な点もありましたが、妻はそれなりにヒントを得ていたようです。むしろ、私が楽しそうに料理をする姿を見て、肩の力が抜けていったのかもしれません。
最近では私よりもすっかり料理が上手になりました。“いつの間にこんな料理を作れるようになったのだろう?”と驚かされることもしばしばです。きっと私の母と同じように喜んで食べてくれる子ども達を見て料理をすることが楽しくなってきたに違いありません。